身体と心の声を聞きながら暮らす

持病はありますが、穏やかに暮らしたいと思います。

怒る

私は娘のみかんにほとんど怒らない。
「あんた、それはないわ」程度。
もう直ぐ31歳になるし、私が彼女に教育することはない。


昨夜NHKで、スカパラ特集をしていた。
面白いなあと思って見ていた。
昨日は体調が良く、横たわっている時間より起きている時間が長かった。
レモンシロップを作ることは念願?だった。
週に一度の切り花が届いて飾る。レモンシロップを作る。
自分の時間だ。
自分の時間など、寝るかiPadを見るかだった。
母と離れ、抑うつ状態から脱し、怪我も病気も良くなってきた。
昨日はささやかな幸せを感じていた。


みかんが帰宅した時、やはりテンションは低かった。
実はこの前の公休の平日に、病院の帰りにデパートに寄って、財布とバッグで10万円使ってきた。どちらもおしゃれで可愛くて、キラキラしていた。
みかんなりに大きな買い物で、迷っていたが、同僚が
「20万円のディオールのバッグが欲しい」
の言葉で買うことを決めたそうだ。


高額な買い物をしたからポイントがたくさんついた。
そのお金でクッキーとアフタヌーンティーの紅茶を買ってきてくれて、2人でお茶をしながら大河ドラマを見た。
もう、みかんの心は浮上していると思っていた。


食事をしながら
「お寿司食べたくない?」
とみかんが私に聞いてきた。夫は入浴中。
「うん、食べたいよ。でも給料日まで待って欲しい」
「私が奢ると言っても?」
「それは嬉しいけれど、奢ってもらうのは気が引けるよ」
バッグと財布を買ったから出た言葉だった。
とは言え嬉しかった。ところが
「やっぱり辞める」
と言った。
「え、なんで?お寿司の口になっちゃったよ」
「あんまり乗り気じゃなさそうだから」
「違うよ、奢ってもらって悪いかと思ったし、スカパラ見ながら話していたから、そんなふうに聞こえたんじゃないかな」
「びっくりドンキーにする」
「お寿司がよかったけれど、奢ってくれるならなんでも良いよ」
「…やっぱり奢るの辞める。嬉しそうじゃない」
ちょっとイラついた。
「じゃあどう返事すれば良かったの?やったーありがとう!と言いながらバンザイすれば良かったの?ママはそこまで気を遣って喜びを表現しなくちゃいけないの?」
「…ママさ、時々パパがマグロとホタテの刺身買ってきたら、この2つで満足できる。お寿司まで食べなくてもいいね、と言ったじゃん。お寿司はもう食べたくないのかと思った」
と言った。悲しくなった。


我が家の家計は、あまりゆとりがない。
お寿司だと3人で食べたら15000円近くかかる。
それならバラ苗や花など買う方を選ぶし、そちらの方が安上がりだ。
まるっきり貧困まではいかないが、節約はしている。
削るなら食費。
マグロとホタテを美味しいと言い「十分だ」と言うのは、強がりだ。


「本当はお寿司の方がいいに決まっているよ。あんたに遠慮したしスカパラ見てたし」
イライラするより悲しくなった。
もう私は現役で看護師をやっている時ほど裕福ではない。
エンゲージという仕事を紹介してくれるサイトで、在宅ワークのパートに昨日応募したばかりだった。


いい歳をしてお金がないのは惨めだ。
夫の借金がバレた時、みかんにも借りた。
今は誰からもどこからも借金はないが、服も安物だし、美容室も3ヶ月に一度にして、あとは自分で染めている。
医療費が夫婦合わせてたくさんかかる。
借金こそようやく無くなったが、母が今亡くなれば、お金がかかる。
みかんにボーナス払いで借りるかもしれない。
娘に金を借りる惨めさは、半端じゃない。
その都度夫を責めたい気持ちになってしまう。


「ママ、寝るわ。悲しくなってきた」
ベッドへ行こうとしたら
「仕事を辞めたい」
と言い出した。
「結局八つ当たりしているよね。私なんて存在価値がないんだ。生きている意味がない」
と、うつ病みたいなセリフを言い出した。
まだ精神状態が悪いのだろう。夫が
「みかんくんが…」
とモゴモゴ言い出したが、
「あんたが決めることに、異論はないよ」
と言って、ベッドに潜った。
みかんはお風呂に入らず部屋に行った。


私には武器が何一つない。
みかんは普段私を気遣ってくれる。昨日はたまたま虫のいどころが悪かったんだろう。
だが、まるで目の前にお寿司をエサに釣り糸を垂らされて、私が食いつくのを待っているような気持ちがした。
つまり私が最も嫌う「バカにされた」と思ってしまったのだ。
うつの状態が少し浮上したって、母のこともあるし、病気だらけでまともに働けない。
外を歩くのもリハビリが必要だ。
そこへ在宅ワークを見つけた。
「60代の方、障害者歓迎」
と書いていたから申し込んでみた矢先だった。
Officeを使った入力らしいが、面接をしてみないことには、どういう仕事内容かわからないから、それほど期待はしていない。


別に今更ブランドのバッグなど欲しくない。
老後の貯金をしたいだけだ。
それでも、お金を自由に使えて、若くて、全国に遊びに行けるみかんを羨ましく思う。
私は外出したくないこともあるが、ずっと外食すらしていない。


夫が私のところに来て話しかけた。
「お金がないのも働けないのも、病気も家を無くしたのも全部惨めだ」
私が愚痴を言うと夫が
「ごめんね」
と言った。気を遣えなかった。
「今とてもイライラしているから、1人にして欲しい」


お寿司奢る→やっぱり辞めた。
人を期待させて、落とす。
みかん自身情緒不安定はわかるが、こっちも非常に惨めだ。
「ウワァ、嬉しい、ありがとう」
とでも言いながら、派手に喜べば良かったか。
金をちらつかせる者に媚びるのは嫌だ。


私はみかんを溺愛している。
家族だから、いつも仲良しこよしじゃない。
だが、生き様の違う3人である意味共同生活を送っている。
この前、ブルーミーの花を飾った上に夫に新聞を置かれて腹を立てた。
相手は私の愛でる花など、どうでもいいのだ。
それでも家族で暮らすことを選んだのだから、耐えるしかない。


眠って起きたらまあまあリセットされた。
みかんが起きてきたら、いつものように「おはよう」と言うさ。
みかんがどう出るかわからない。
いつも通りに振る舞うだけだ。
でも、傷は癒えていない。

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