身体と心の声を聞きながら暮らす

持病はありますが、穏やかに暮らしたいと思います。

あたりまえの日

昨日みかんは漫才を観に行っていた。
その間に私と夫は、桜を見に行き、ジェラートを食べた。
帰宅したみかんに桜を観に行ってきたことを話し、写真を見せた。
「えーーー、ひどい、行きたかったよー行きたいよー、ジェラートも食べたい!」


ということで、再び昨日と同じ行動+αをした。


みかんは写真を撮りまくっていた。
桜は風に舞っており、はらはらと散りつつあった。


今日食べたジェラート。



キャラメルとよつぼし(いちご)


晴れ渡っており、随分日光を浴びた。


その後、母の病院へ向かった。
洗濯物を取り替えなきゃいけないし、みかんは母に随分会っていない。
生きているうちに会わせておきたかった。
休日になれば、彼女はあちこち出かける。
チャンスはそうそう無い。


母の病院は遠い。中心街から山に登ったところにある。
長期連休とあってか、お見舞いに来る人が多い。駐車場が混んでいる。
仕方がなく入り口から5分くらい歩くあたりに駐車した。
たった5分だ。
この時点で私は腰が痛かった。
腰の骨折は完治したので、最近コルセットをしていない。
多分、椎間板が消滅したところが痛いのだろう。


玄関から母の病棟まで何分かかるか計ることにした。
だが既に散々桜を見ながら歩いたので、疲れていた。
「ちょっと休ませて」
一気に病棟へは辿り着けなかった。
一度外来の椅子にすわり、小休止してから歩き出した。
腰が痛くて足が前に出なくなってきた。


母のいる病棟に着いた時点で時計を見たら、18分くらい経過している。
エレベーターには一度乗り換えたが、他の人と一緒に乗っていないから、タイムロスはない。
「昔、こんなに歩いていたっけ」
母のいる病棟は、私が産後再就職した場所だ。
みかんを保育園に預けてから白衣に着替え、パッパと歩いて行った所。
エレベーターも使わなかった。
その時私は26歳。まあ、元気はつらつだろう。


看護師にことわってから母の病室に入った。
今日はパッチリ開眼していた。
ただ、痰が絡んでゴロゴロしていた。
前の病院とは違って、寝たきりなんだろう。


「ばあちゃん、みかんが来たよ」
母は私の方を見る。
みかんに話しかける様に促すが、遠巻きに見ており母に近づこうとしない。
「痰取って貰えば?」
「そうだね」
ナースコールをして、看護師に痰の吸引をお願いした。


痰の吸引は、20秒ほどでいったん停止して呼吸を整えさせてあげないと、本人は苦しい。
ところが、これは各看護師の癖というものがあり、一気に取り切ろうとする人もいる。
今日の担当看護師がそうだった。
鼻からチューブを入れ、咳き込んで気道が空いた瞬間を逃さずチューブを入れる。
うまく入った。
ゴホゴホと咳き込み、顔がみるみる赤くなる。
母は必死に看護師の手を払おうとする。
私は母の手を握った。
鼻の方へ手を持っていこうとする力が強い。
一旦やめてください…言いそうになった。
かわいそうだった。


吸引後、はあはあと呼吸をしている。
痰はスッキリ取れた。
看護師にお礼を言った。
「ばあちゃん、痰取れてよかったね」
目を瞑って早い呼吸を続けている。


中心静脈栄養にしたことを、後悔した。
胃ろうの方が良かっただろうか。いや、同じことだ。
コレでは無駄に長生きしてしまう。
もう楽にさせてあげたい。


「ばあちゃん、また来るよ」
手を振ったが、振返してこなかった。
悲しかった。


帰りの病院の廊下を再び歩く。玄関まで果てしなく遠く感じた。
中間あたりでまた椅子に座らせてもらった。
歩けない。
一気に普通の速度で歩けば、10分で着く。
息切れが強くなってきた。
もう今日のエネルギーを使い果たしていた。
加えて腰が痛い。足が前に出ない。歩けない。辛い。


なんとか玄関に着き、外に出た。すぐにマスクを外し、ハアハアと息をした。
そこから5分歩いて、車に乗った。
息切れが強い。止まらない。腰が痛い。


みかんが
「この状態で中心街への通勤なんて無理だよ、あり得ないよ」
と言った。訓練すれば…言いたくても苦しくて話せない。
息切れは20分くらい続いたと思う。


13時に出かけて家に着いたのは15時半。
ソファーにもたれかかった。手も洗えない。
10分ほど休んでから手を洗って、下着を取り替えた。
入浴予定だったが無理だ。
夕方の薬を飲んで、ベッドに潜った。
疲れた。とても疲れた。
目を瞑ったら、眠りに落ちた。


目が覚めたのは18時前。2時間近く眠ったことになる。
日光にあたったことも疲労の原因だろう。
「ご飯の用意、できてるよ」
そば、刺身、鶏もも肉をオーブンで焼いたもの、玉ねぎの酢漬けが並んだ。
空腹ではあった。
だが食べ出すと、刺身以外はとても食べられなかった。
その刺身もご飯も残し、食事を終えた。


みかんは明日の夕食の仕込みをしてくれた。
明日、従姉妹の入院している病院に行くことになっている。
従姉妹の姉と待ち合わせているのだ。
午前中は訪問看護がある。病院へは14時に着く様に行く。
到底夕食の支度はできそうにない。
「ママが食べられるように、またサムゲタンにした。水と塩だけお願い」


今日の行動を振り返る。
私は普通の人があたりまえにする行動しかしていない。
なのに、なぜまともにできないのか?
長期安静は仕方がなかった。だが、いつ復活するのかわからない。


夕食の時、テレビで幼稚園児が、となりのトトロの「さんぽ」を歌っていた。



歩こう 歩こう 私は元気



簡単な言葉で、真髄をついている。たった3節で。


そうだ。歩こう。
与えられた身体を使って、人生を歩くのだ。

×

非ログインユーザーとして返信する